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ブルーフォートレス vol.1

  • アディムクティ
  • 8月27日
  • 読了時間: 7分

更新日:8月29日

                                                              2025.8.27(水)


先日、アディムクティのカウンセリングルームで、カウンセリングの事例検討会を開催しました。


開催を待つ間、想像をしました。


カウンセラー10人が、静岡県の西からも東からも集まって、1人の相談者様と1人のカウンセラーの面談事例について意見を交わし合う検討会のイメージ・・・。


1人のこと、1ケースのことについて色々な意見を交わし合っています・・・。


人間を類型化して俯瞰することが多い世界の中で、一人の悩みに焦点を当てていること自体温かい。

その1つの事例検討をきっかけに、万の人々とのカウンセリングに影響をもたらしていく未来にも、想いを馳せています・・・。


なんて素敵なことなんだろう。


県内の遠いところから集まってくるイメージが広がり、「静岡県」を事例検討会のネーミングの中に入れたくなりました。


ずっと静岡という字を眺めていたら、「青」が入っていることに気がつきました。


こういうことって普段は気がつかないものです。


青かぁ・・・そういえば駿河湾も青、富士山も緑じゃなく青だよな・・・と思い、「ブルー」を入れたくなりました。


次にカウンセラーが力をつけ成長していくと、地域社会にどのような変化が起きるのか考えていきました。


考えている最中に、私のスーパーバイザーの「カウンセラーは最後の砦」とおっしゃられていた言葉を思い出しました。


スーパーバイザーは、医者から見離されてしまったような相談者様に粘り強く関わり、時間はかかったけれども回復を果たしていかれた経験をお持ちで、そこから導き出された貴重な言葉だと思い心に残っていました。


「砦」というと、1つで小さいようなイメージが私の中にはありました。

しかし10人が手を結び肩を組んだら?

それはもはや「要塞」といえるのではないか?


もし要塞があれば、目の前の一人の人が絶望の海に落ちないように守っていけるようになる・・そんなイメージが膨らみました。


そうなれば安心安全な地域づくりの一助になっていける・・・・というイメージが浮かび、自分の中から高い志がじんじん湧いてきました。


そしてそれはやがてワクワクした気持ちに変化してきました。


最終的に事例検討会のネーミングとして、「青い要塞」→「ブルー・フォートレス」が浮かび上がりました。

先日の検討会は、第1回目ということもあり、最初に自己紹介をし、次に設立の趣意についてシェアし、その後事例検討・・・私の最近の事例を検討していただきました。


その事例に登場される相談者様は、6月に初めてお越しいただいたAさんの事例でした。


Aさんの主訴は「ペットロスでつらい」・・・とのこと。

この悩みは私にとっては初めてだったこともあり、記録をとりながら学ばせていただくことにしました。


「あなたの事例を取り上げて、カウンセラー仲間で勉強をさせてもらえませんか?」とAさんにお願いをしたところ、「私の悩みがお役に立つならどうぞ使ってください。」と快く承認してくださいました。


そして、2回目にいらっしゃった時のカウンセリングを全て録音しました。


120分の中から15分間を抜き取って、クライアントとカウンセラーの発言を全て文字に起こします。


これを「逐語記録」というのですが、私はこの技法を用いた学びに強い関心があり、2017年後半〜約2年間、逐語記録の事例検討で第一人者である青木羊耳先生の元で開かれている勉強会に通いました。


高速バスで通った2年間をとても懐かしく思います。


勉強会には公認心理士や福祉施設で働く専門家や会社経営者など、さまざまな分野で活躍している人たちが参加していました。


その時は右も左もわからず、ただただ無我夢中でやっていた未熟な自分でしたが、今回文字起こしをしながら、「あの時の学びがこれほど役になっているとは!」と思い、今頃ですが青木先生や勉強会で出会った皆さんに対して感謝の思いがじんわり湧いてきました。


初めて自分の事例を検討していただいたとき、強い否定にあったことも、批判にさらされたことも、後からフォローされたことも、振り返れば全てがいい経験になったなーとしみじみ思いました。


久々に、一言一言を拾っていく地味で地道な作業を長時間かけてやりましたが、その中で心理学者でカウンセラーのカール・ロジャーズが残した言葉、


「逐語記録は人間が自ら変容する力を科学的に探究するための顕微鏡」


を思い出しました。


Aさんの声のトーンやスピードの変化、


スピードがどんどん落ちて、沈黙が流れたり・・・


時には笑いながら嘆き、


時には泣きながら怒る様子・・・。


一方、カウンセラーの自分は・・・。


心が痛くなり涙が流れたり、


時にはAさんの心の声と自分の中からも湧いてくる声の、2つを同時に聴いている状態(音楽で例えると二重奏を聴いているような)になったり、


自分がどんな言葉も発せなくなる瞬間(強い悲しみに圧倒されて)を体験していたり、


そんな色々な方向におもむいていく感情をもう一度思い出し、波が立つようにザワザワしてきます。


特に、自分の無駄な発言や無神経的な反応にがっかりして嫌気がさす・・・といった不快な感情が、作業の邪魔をしてきました。


そしてそれが、私に長時間の集中をさせてくれませんでした。


何度も音源を戻したり繰り返しながら、一文字ずつタイピングするのは、力不足の自分と向き合う時間でもあり、精神的にしんどい時がありました。


「なんてダメなカウンセリングなんだろうか!」という思いがどうしても顔を出してきます。


しかしだんだん、Aさんと萩原法代というカウンセラーによるカウンセリングを文字に起こしているだけ・・・と冷静さを取り戻し、「この作業が顕微鏡で見るということなんですね」と、ロジャーズさんにつぶやいているようなフェーズに入っていき、どんどん自分を俯瞰して見ることができるようになりました。


何時間もかけて作った逐語記録が完成した時には、急に時計が動き始めたような感覚を覚えたほど、久しぶりに集中した自分に気づきました。


逐語記録を人数分印刷。


そして当日を迎えました。



たくさんの貴重なご意見やアドバイスをいただきました。


特に検討してほしかった私の発言のところについても、


「Aさんの発した言葉(気持ち)をそのまま返してあげても良かったのではないか?」


というご意見に接した際には、やはり基礎基本が大事で、常に原点回帰をする意識を持っていたいと、痛感しました。


本質を見抜いて感想を述べてくださる人、

Aさんの苦しさと似たような自身の体験を語ってくださった人、

この本がいいよ、と勧めて下さった人、

逐語記録を「魂の事例検討報告だね」と讃えて下さった人、

とても学びの多い機会になったと言って下さった人もいて、

「やって良かったなぁ」とホッとした気持ちになりました。


また3名の見学者の感想も新鮮で勉強になりました。


専門的なものを学んでこられた訳ではなくても傾聴(口を挟まず4時間友人の悩みを聞き続けたそうです)を実践されている人、

「クライアントはこんな気持ちでカウンセラーに話をしている」・・・という気持ちを率直に伝えてくれた人、

「ゲシュタルト療法を学んで・・・本音が言えず、ずっといい子できてしまった自分を最近になって変えることができた・・・」と嬉しさを生き生きと語る人、


どの人の感想もいいものでした。


私にとって、深い学びの機会を得ました。


1人で仕事をするのも自由でいいですが、仲間と切磋琢磨しながら励まし合って進んでいくことも大事なことだと思いました。


この事例検討の成功の陰には、事例の提供を承諾して下さった一人の大切な相談者のAさんがいることを決して忘れません。

本当にありがとうございました。


 
 
 

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