

講師 : 中村圭志さん (NPO法人HELPS代表理事)
世の中にはさまざまな仕事があります。
働き方も多様化しています。
私が2年前にOPENした障がい者就労支援事業所で実際に彼らに提供している仕事は、動画編集・音楽制作・芸術制作から、清掃の仕事・プラモデルの袋詰め・食品製造・部品製造など多岐にわたります。
働く機会を幅広く提供し継続する力を身につけていきながら、その価値を高めていきたいと思います。
また働きたいという願いを持っている障がい者と、働き手を必要とし ている企業を繋いでいくことで社会に豊かな調和を生み出していきたいと考えています。
そんなテーマでお話しをさせていただきます。
主催 : アディムクティ 協力 : NPO法人HELPS
アディムクティ萩原より メッセージ
今、個人のライフスタイルや価値観、キャリアプランに合わせて、柔軟に働き方を選択できる社会に変わりつつあります。
そんな中で、障がい者の方に対する支援のあり方が従来のままでは、彼ら彼女らの素晴らしい能力が発揮されないだけではなく、1人の人の力を社会に反映させることができなければ、目に見えない形で私自身の生きづらさに跳ね返ってくることでしょう。
カウンセリングルームに来られる方の中には、生まれながらに持っている障がいを受け入れながら、社会の理不尽さを目の当たりにして、困ったり悩んだり葛藤したりしながら、日々挑戦している方がいます。
その方を支えるご家族様もまた、同じように挑戦の日々を送られています。
その方々と接する日々の中、安心と希望を運んでくれるような講師の方を探していたところピッタリな人が見つかりました。
講師の中村さんは、従来の障がい者支援のあり方に「異議あり!」と声をあげた方です。
問題意識を常に持ちながら、独自の「Unlearn」(すでに持っている知識や価値観などを放棄することで、思考をリセットする学習方法)を展開している、ユニークで開拓精神にあふれている方です。
カウンセリングルームにお越しいただいているorいない問わず、
就労継続支援A型事業所、企業、当事者の方、保護者の方、また障害福祉、障害者の就労支援に興味のある皆様方のご参加をお待ちしております。

アディムクティ代表 萩原法代
Report
Unlearn
私がカウンセリングルームを開所して一番最初に訪れてくださった相談者様は、知的障害をお持ちのAさんと、そのお母様でした。
Aさんとお母様は、ほぼ毎月1回のペースで欠かさず通われています。
Aさんは、学校を卒業してすぐに身内の伝手で、ある職場に就職が決まりました。それから長い間、真面目に働いてこられました。
ところが、Aさんは職場で問題を起こすこともあり、時には会社の経営者がAさんの自宅を訪れ、Aさんの両親に状況を説明し、このようなことを起こさぬよう親御さんからも言ってほしい、という対応をされてきました。
お母様は、そのたびに心を痛めてきました。
その思いをカウンセリングルームで話してくださるとき、いつも涙を流していらっしゃいました。
「Aには悪気はないが、判断がつかないことがあって、してしまう問題行動もある。それをわかってほしい。誰にもこの思いを言えないしわかってもらえない。」
お母様は、今だけじゃなく、Aさんが小さい頃から、たくさんの悲しい思いや、どこにもぶつけられない怒りの混ざった悔しさを経験してこられました。
またカウンセリングルームでは、Aさん自身の語るお話の特徴として、同じ話を何度も繰り返すということがありました。
私は、信頼するカウンセラーにそのことを相談しました。
すると、「同じ話を何度もするのは、本当にその話をしっかり受け止めてもらえなかった・・・とご本人が感じているからかもしれない。」と言う側面のお話と、「嬉しかったら、または悲しかったら、何度でも人に話したい!という思いって、誰もが持っている。だからこちらも何度でも聴いて受け皿になっていくことだよ。きっと話し終えたAさんはスッキリして、また頑張ろうって思える。それはカウンセラーにとっての大きな醍醐味ではないでしょうか。」とアドバイスをくださいました。
そのアドバイスに対し、当時は半信半疑でしたが、後からそのアドバイスが正しいものだとわかるできごとがありました。
Aさんとお母様は、勤めていた会社で起こした、ある問題行動を境に、大きな決断をしました。
それは長きにわたって働いてきた職場を辞めるという決断でした。
詳細は割愛しますが、その後、隣町の障害者就労支援事業所に通うことになりました。
そこでは、多くのスタッフの見守りの中で、様々な仕事を訓練したり、イベントを企画し、利用者同士で力を合わせて準備していくプロセスを体験したり、育てた野菜を収穫してマルシェで販売したりするなど、いろいろな力を身につけていきました。
しかしそこに2年以上通いましたが、就職が決まらず、私もAさんのお母さんも詰まってしまいました。
そんな時、藤枝市内で就労支援事業所を立ち上げた友人の存在が閃き、今年の3月29日、講師としてアディムクティにお呼びし、講話と参加者へのアドバイスをしていただく機会を作ることができました。
そこに、お母様も参加されました。
お母様は、彼にいろいろな質問をしました。
お母様は、今までの傷つき経験によって、どうしても行動にブレーキをかけやすく、遠慮がちになり、そして諦めがちになっていました。
そんな声にできなかったであろう声を、友人にぶつけるように発していきました。
友人からはいろいろなアドバイスをいただきましたが、特に印象的だったことは、
「受け身ではいけない。障害をお持ちの当事者のご家族、そして当事者と関わっている方は、もっと積極的に、事業所にも市にも声を発したり、どんどん聞いていくことが大事ですよ。そのことによって一番状況を変えられる可能性が高まるのは、子供よりも高齢者よりも障害者なんですよ。」
と言う言葉でした。
お母様は、その日から変わりました。
積極的に市役所にも足を運び、納得のいかないことが生じたらすぐ聞くようになり、事業所の支援員さんにも電話してAさんの状況を聞いたりしていきました。
そしてそれから8ヶ月が経過した12月現在、彼は、ある就職先が決まる可能性が高くなってきており、今はそこでの仕事内容に対しての大詰めの訓練段階になってきました。
私は「Unlearn」と言う考え方の中に重要なものがあることを学びました。
それは、思い込みを作っていることの多くに「心の傷」があると言う視点です。
そしてそれは、なかなか当事者だけでは、気づくことができないことも事実としてあるということです。
忘れてしまったけど、私の幼少期も、わからないことを家族や先生や友人に聞いたときバカにされたり、からかわれたりしたことが「心の傷」となって、人に聞けなくなってしまった場面がたくさんあって、思い込みの多い自分に形成されていったのかもしれない・・・・。
もしかしたら、私の心の奥で疼いているかもしれない「痛み」・・・・それらを見つけて、少しずつ取り除いてあげることは今からでも全く遅くないことだ、と思うようになりました。