2025.2.5(水)
先日、カウンセリングルームにおみえになった方が、
「親の物忘れが最近気になって・・・。認知症の兆候なのではないか?と思い、病院に連れて行きたいのに、本人がそれを嫌がっている。」とおっしゃっいました。
2人でいろいろ考えてみました。
・初めていく病院ではなくて、親が普段風邪などをひいた時に行っている顔馴染みのかかりつけ医に相談するのはどうなのか。
・健康診断を受けに行こう、という感じで一緒に行ったらどうだろうか。
など・・・対話の中からアイディアがあがってきました。
その方が帰られた後、1人になって私も考えてみました。
親とのコミュニケーションだと、どうしても「他者とのコミュニケーション」と捉えることができないと思いました。
親に対してだと、言いたい事を言いたい時に言いたい様に言ってしまいます。
そこで、私は、もし話す相手が「他人」だったらどうする?と考えました。
すると、やはり、YouメッセージよりもIメッセージの方が対立を生まないコミュニケーションになると思いました。
主語を自分にして、自分の気持ちや思いを伝えるというIメッセージにしてみました。
目の前に自分の親がいて、クライアントと同じ状況だと思って・・・。
「お母さん、いつも自分のことを自分でやれるし、健康でいてくれて嬉しいし、とてもありがたいよ。
でもね、最近ちょっと物忘れが多くなっているのが、私、気になっているんだよ。
私の年でも忘れっぽくなってきているんだから・・・。
若くても認知症になる人がいるからさ、健康診断してもらいながら脳の機能の方も観てもらおうと思っているんだけど一緒に行かない?
診てもらって、認知症ではありませんよ、と言われば安心できるかな?と思って・・・」
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最近、「家族のためのユマニチュード」という本を読みました。
ユマニチュードという言葉を知りませんでした。
これは、フランスの体育学の専門家イヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが考え出したケアの技法だそうです。
病院や介護施設で起きているケアが困難な状況の解決に40年間取り組み続け、
「なぜ、このときはケアが上手くいかなかったのか」
「なぜ、今回はうまくいったのか」と思案をめぐらせながらのケアの技術を開発しました。
「ユマニチュード」とは「人間らしさを取り戻す」という意味のフランス語の造語だそうです。
ユマニチュードの哲学では、「人とは何だろう」と考える時、
「人は、そこに一緒にいる誰かに、「あなたは人間ですよ」と認められることによって、人として存在することができる」と定義したそうです。
本には詳しい介護のあり方が述べられています。
読めば読むほど、人間ってすごいなあと思うばかりでした。
「持っている力を奪わないこと」という章で、それを特に痛感しました。
なんでも周りがやってしまうと、介護を受けている側は、持っている力を奪われてしまった、人間として認められていない、そんな気持ちになるそうです。
毎日20分立てれば寝たきりにはならない、と断言している文章を目にしたときにはとても勇気づけられました。
最後の最後までその人が「人間として生きる」ことを、周りの健康な人はお手伝いができるかどうか・・・それだけで、介護は難しいことではないと思えてきました。
人間の尊厳を尊重するかかわり方かぁ・・・相談者様のおかげで、私も勉強させていただきました。
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